++ GLASS FOREST
はじめに -
DFFのバッツ受小話中心。
85、105、75、95あたりが多いかと。
時にアダルトな描写もございますのでご了承の上お読み下さい。

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2010/05/27
終わって始まる(85&9)
現代設定だけど日本じゃないような・・スコバツ同棲中。
「スコールから連絡がない・・・」
机の上に頭を突っ伏したバッツが唸るように呟いた。
「まだ帰ってこないのかよ?」
「うん、こんなに連絡ないの初めて」
ここ数日、バッツの様子はずっとこんな感じだ。ジタンはもう慣れたと言わんばかりに注文したジンジャエールを啜りながら相手をする。

大学が長い夏休みに入った時、スコールが急に実家に帰ってしまった。
「あれは強制送還ってやつだよ」
「違うだろ」
「だって強制的に黒いスーツ着た男の人達に連れていかれてたよ」
「まあヤツの実家がすごい所だからなあ」
スコールの実家はかなりの資産家だ。バッツの想像にも及ばない由緒正しき家系とか。そして彼はそんなおうちの御曹司。バッツはため息をついた。
「わかってたよ・・いつかこんな日がくるということは」
「なんだよ、こんな日って」
「別れの日」

ジタンがジンジャエールを吹き出した。

「ちょ、おまえそれは決断が速すぎだろ!」
「ずーっと考えてたもん・・・」
突っ伏した頭を下げたままなのでバッツの表情は見えないが、かなり落ち込んでいる様子だ。流石にヤバイ、とジタンも焦り出した。
「スコールがおまえと別れるはずないだろ。あんだけおまえにベタ惚れなんだから」
「おれだってベタ惚れなんだ。むしろベタ惚れ度はおれの方が高い気がする」
「そうだおまえらは病的なくらいベタ惚れだ。じゃなくて、今はそこらへんは聞く気ないぞ。とにかく、お互いベタ惚れなんだから別れる必要はないだろ」
「そうなんだけどな・・スコールのご実家とかな、越えられない壁が」
「へぇ、バッツでも一応そういうこと考えるんだ」
「考えるさ。いつまでも子供同士じゃないんだし。スコールは実家の話しようともしないし、むしろ敬遠しているように見えるけど、周りの人達はそうもいかないだろ」
「うーん、そこらへんは一度ちゃんとスコールと話せばいい。おまえ一人で突っ走るなよ」
「スコール優しいから・・言いにくいこともあるだろ」
「優しさかぁ?それ」
「いつもおれのこと一番に考えてくれるもんね」
「じゃあもうあれだ、あれしかない」
「あれってなに?」
「結婚」

ドカッ
バッツが机に頭をぶつけた。

「無理無理、それはない!」
慌てるバッツの顔をジタンが掴み、しっかりと目を合わせる。
「なんでだよ。法律的にも結婚できるぞ」
「で、できるけど・・でも駄目だ」
「すでに今だって事実婚状態だろうけどさ。この際きっちりケジメつけてこい!」
「だっておれ、子供生めない・・」
「はいぃ?」
「男だから、子供生めないだろ!そんな嫁、スコールのご実家様が認めるはずがない・・」
「おまえが嫁役なのはすでに決定事項なんだ」
「うっ、それはッ・・」
「夜の役割とかか?まあ家事もほとんどバッツがやってるしなぁ」
バッツはまた机に突っ伏してしまった。その様子を見てジタンが笑う。
「風のふくまま気ままにフリーダムなバッツがそんなこと考えるようになるなんて・・!恋愛ってのは本当、良くも悪くも人を変えるなぁ!」
「バカにしてんのか」
「いやあ、可愛いなぁって」
「うわー、なんかむかつく!」
ニヨニヨしながら答えたジタンに、頬をふくらますバッツであった。


モヤモヤした気持ちを抱えながら自宅に戻ったバッツだったが、戻っても当然スコールはいない。そもそもこんなに長い間連絡をしてこないスコールなんて、今までありえなかった。放浪癖のあるバッツがフラリと旅に出ようとする度に首根っこを掴んで「行き先を言え!いきなりいなくなるな!1日1回は連絡しろ!」と捲くし立てるのがスコールだったはずだ。

(おれにはあんなに強く言って躾したくせに・・自分はいいのかよ)

心の内で悪態をついても更に気持ちは弱るばかり。無意識に手だけ動かして荷造りを始めていた自分に気付いたバッツは悲鳴を上げてバックを放り投げた。
「あ、危なかった・・!うっかり旅に出てしまう所だった」
いや、旅の支度ではなく、家を出る準備をしてしまったのかもしれない。このまま家を出て行方をくらますことだってできるのだ。バッツはその場にへたり込んだ。

「スコールぅ」
涙まじりのバッツの呟きがこぼれた時。

「どうした!何かあったのか!」
勢いよく玄関の扉が開かれ、待ち望んでいたスコールが焦りの形相で飛び込んできた。
「す、スコール!?」
あまりのタイミングの良さに驚きの声をあげるバッツ。
「変質者でも現れたのか!?玄関で座り込んで何があったんだ!?」
「お、」
「お?」
「おまえがいけないんだろぉぉ!!」
バッツが力を込めて放ったボディブローが、スコールの腹部に見事にきまった。


(しばし休憩)


「・・・すまなかった」
「本当だよ!一週間も連絡ないから、もう帰ってこないのかと・・」
再びじわりと涙をにじませるバッツの目頭を、スコールの手が優しく拭った。
「ちょっと携帯を壊してしまってな」
「なんで?」
「地面に叩きつけた・・」
「なんでそんな流れになったかは聞かないでおくな」
「ああ。それで、家の電話を使おうにも電話のない部屋で監禁状態でな」
「そ、そうなんだ」
想像以上の環境にバッツの顔が引きつった。そしてそんな状況になったのにどうやって戻ってこれたのかが不思議で仕方なかったが、バッツは怖くて聞くことができない。答え次第では、覚悟していた別れの日が来てしまうかもしれないからだ。

「だが、もう大丈夫だ!」
「へ、な・・何が?」
バッツの心境とは裏腹に、晴れ晴れとしたスコールの声が響き渡った。
「家督は放棄してきた」
「え、ええええええええええええ!?」
「希望職種の内定も取れている」
「ええええ!?」
「だから、あんたはおとなしくこの書類にサインすればいい」
「ええ?」
驚きの連続で表情が戻らず口を開けたまま、バッツはスコールから渡された書類を見た。

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スコールはその時、バッツの涙が前方向に向かって勢い良くビュっと吹き出すのを、確かに見た。
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